本2冊

今週読んだ本は2冊。たまたまどちらも女性作家でした。


1冊は中村安希さんの「インパラの朝」。だいぶ以前に出版された本ですが、今回たまたま手にとってみました。

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684日かけて33カ国を旅行した紀行文です。

ただ、その訪れた国がとんでもない国が多いのです。アジアからイスラム国家からアフリカ東岸をずらっと縦断という感じですね。
チベット・ネパール・マレーシア・カンボジア・ミャンマー・インド・パキスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・イラン・シリア・ヨルダン・イスラエル・イエメン・ジブチ・エチオピア・ケニア・ウガンダ・タンザニア・マラウイ・ザンビア・南アフリカ・ガーナ・ブルキナファソ・トーゴ・ベナン・ニジェール・セネガル・モリタニア・西サハラ・モロッコ・ポルトガルの各国

1冊で、これだけの国を書くのですから1国あたりあまり詳しくはないですが、冷静にさらっと書いてあって読みやすい。

まず出だしの文章から・・・・何を持っていこうと考えあぐねて以下の荷物をパックパックに詰め込むことに。

「私は45リットルのバックパックの底に980円のシュラフを詰めた。3日分の着替えと洗面用具、パブロンとバファリンと正露丸を入れた。それからタンポンとチョコラBB。
口紅とアイシャドウと交通安全のお守りを用意した。パソコンとマイクとビデオカメラを買い揃え、小型のリュックに詰め込んだ。果物ナイフや針金と一緒に、ミッキーマウスのプリントがついた覆面も忍ばせた。そしてジムで鍛えた両腕に4本の予防注射を打ち、体重を3キロ増やして日本を離れた。」

途中で、イスラム圏に入る時に、女性ひとりだとなかなかビザがとれないので、日本人男性を捕まえて結婚してしまいます。
途中で離婚してしまうのですが、そこまで思い切ってしまうところがすごい。男でもここまでできるひとは少ないでしょう。


危険な国が多く、殺される、人質になるなどの危険は予想しながらも、覚悟はできていて、次のような文章を書いています。
「・・・・・不運にも事件に巻き込まれたら……。恐ろしいことが待っているだろう。怖いのは人質になることや犯人からの暴行ではなく、日本の世間の冷笑や、残してきた日本の家族への激しい批判と非難だった。両親は国家に頭を下げて世間に許しを乞うてでも、娘の命を救うために命乞いをするだろうし、それを止める権利はない――国家に個人を救えるだけの力があるかは別として。
けれど、と、私は考えている。それが子から親に対する残酷な要求と知りながら、それでも無理を望むなら、運の尽きた娘について胸を張って語ってほしい。誰かに聞かせる必要はない。ただ呟くだけで構わない。
「とても幸せな娘でした。少なくとも自宅のテレビの前でポテトチップスを食べながらぼんやりと座っていたのではなく、現実と彼女の間の距離をたとえわずかであったとしても縮めようとする試みの中で志半ばで敗れたのだから。あの子は日本が好きでした。だから日本を離れました。そして、世界が好きでした」と・・・・

なかなか立派な覚悟です。

顔立ちもちょっとキリッとした顔ですね。顔だちに自信があるのか、ここまで大きな写真を自著の本に掲載する女性は珍しい。
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作者の言葉ではありませんが、インドでマザーテレサのところにボランティアにきていた欧米人の女性の言葉。
なぜボランティアに来ているのかという問いかけに対して・・・・
「私は、毎日疲れきって眠りたい。きょうも精一杯頑張ったという確信を持って眠りたい」
というのが印象的でした。
こういうことのために、ヨーロッパでの快適な生活を捨ててインドでボランティアをする人もいるんだなぁと己の怠惰な人生を振りかえってしまう言葉でした。



さてもう1冊は「みおつくし料理帖」の高田郁(かおる)さんですね。
大好評でテレビドラマにもなった「みおつくし料理帖」が終ってしまったので、さてこのあとどうするのかと思っていたら、「あい」という本が文庫化されました。
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千葉の九十九里の貧しい農家の娘として生まれた「あい」という娘の一生を小説仕立てにしてありますが実在の人物のようです。
実在の人物を書くのはこの作家としては初めてではないでしょうか。
そういう意味でも、ステージが一段あがったような気がする作品です。

貧しい時には、藁を切り刻んで潰して、黍にまぜて食べるというような生活を送っていますが、つねに前向きに生きた女性です。
関寛斉という蘭方医も九十九里の生まれですが、佐倉藩の佐藤泰然のもとで医術を学び、学費がないために佐藤の家の下働きをしながら、「乞食寛斉」などと呼ばれながら名医となった人の妻となり支え続けた女性ですね。

阿波の殿さまのお付きの医者として出世はするものの、明治政府からの要請もこばみ、最後はすべてを投げうって、寛斉73歳、あい68歳の時に蝦夷地に開拓民として移住するという、これも考えさされるお話です。

「みおつくし・・・」の時は息ぬきとしておもしろい本だけど、「ま、こんなレベルだろうな」と思っておりましたが、これからもちょっと楽しみな作家になってきました。


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この記事へのコメント

C爺
2015年03月21日 21:31
紀行文「インパラノ朝」読みたい本ですね、おとなしくしていた今月は?山本一力、澤田ふじ子、鈴木英治、津本陽、東野圭吾などなど乱読の春を満喫しました。
2015年03月21日 22:00
定期検診が終るまでは、おとなしく本でも読んでいるしかないですね。あまり読み過ぎて肩こりなどなさいませぬように。
浜えくせる
2015年03月23日 01:21
本2冊の紹介、参考になります。
特に「インパラの朝」は、私の訪れていない中東やアフリカの紀行文が多く、楽しめそうです。
私は、昨年11月に両目の白内障手術を終え、新聞を眺めたり、読書が以前より容易になったので・・・。
2015年03月23日 06:54
白内障がよくなってよかったですね。どこかが不自由になるとしたら・・・片手がなくなる、耳が聞こえなくなる、足が1本なくなる・・・みんな嫌ですが、目が一番嫌ですね。
インパラの朝、ひとつひとつの国の記述が短いので、ちょっと物足りないところもありますが、その代わり乾いた文章でスピード感があります。
浜えくせる
2015年03月23日 23:57
月曜の午後、鶴見のブックオフで、集英社文庫の中村安希著「インパラの朝」と「食べる。」を見つけ、早速買ってきました。ページを開くのが楽しみです。
sazae3
2015年03月24日 18:25
なんとなく元気が出ない時に本を頼りにしたりするのですが、今回は風船屋さんの影響で中村安希さんの「インパラの朝」と高田郁さんの「あい」は無かったのですが晴れときどき涙雨」今読んでいます。
何故か?さぱさぱして元気が出ます。ありがとうございます。。。そうそう。。・・私は図書館で借りて居ます。
2015年03月24日 20:34
高田郁の「晴れときどき涙雨」ですか。まだ読んでいませんが、たしかエッセイでしたね。今度読んでみます。風船屋も最近は図書館が多いですね。インパラの朝も音楽ホールの図書館で借りたものです。本屋で買う時は買おうか買おまいか悩みますが、図書館の場合は目に着いたものを片っ端から借りてきて、ちょっと読んでおもしろくなさそうなものは読まないで返すことも多いです。