近藤史恵さんの“エデン”

近藤史恵さんの自転車レース界を舞台にした小説「サクリファイス(犠牲)」がおもしろかったので、楽しみにしていたシリーズ第2弾「エデン」を読みました。
もともとミステリー作家だったようで、+αとして謎解きの味付けがありますね。自転車のことをよく勉強したのでしょうね。
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ツールドフランスに代表される自転車ツァーレースはGGには非常にわかりにくいのですよ。いろいろガイドブックを読んで、大体のところは理解できているつもりなのですけどね。ルール外の、常識とか、マナーとか作戦とかそういったところがわかりにくいのですが、この小説はそれらの一端がわかるような気がします。

自転車は先頭切って走ると風の抵抗が激しいので、誰が犠牲になって先頭を走るかということが問題なのですね。
結局何人かで(敵・味方関係なく)交替して先頭を走るわけですよ、暗黙裡に。
交替しないでずっと他人の後ろについているやつは、卑怯なやつだということで総スカン食うわけですが、ルールに明記されているわけではないから、ずっと楽しておいて、最後に勝てば、勝ちは勝ちなのですね。

昨年のツールドフランスで5人くらい(全部チームが違う競争相手)が先頭を走っていて、ひとりだけ全然先頭に立たない選手がいたのですね。それでもうすぐゴールというときになって飛び出して勝ちにいったものですから、残りの4人は怒り心頭となったわけです。4人で一致協力(呉越同舟ですけどね)して必死になって追いかけて、結局ゴール前で追いつきましたね。マナー破り(ルール破りではありません)をした選手も自分が勝ちたかったのか、監督から無線で指示が出たのかわかりませんが、そんな事件がありました。

今年のツールドフランスでも優勝を争っていたコンタドール(こん太人形?)とアンディシュレク(アン、ティシュくれ)ですが、勝負どころの登りでアンディが、チェーンが外れてしまったわけですね。暗黙のマナーでは相手がメカトラブルを起こしたときは、一対一で争っている相手は待ってやるらしいのですよ。
このとき、誰が見ても勝負どころだったので、こん太ちゃんは知ってか知らずか引き離したのですね。GGのようなシロウトでも「当然行くよな」と思ったのですが・・・・
ところがぎっちょんすぃっちょん。観客からブーイングが出たのですね。
こん太ちゃんは「え、チェーン外れていたの?ちーとも知らなかったなぁ」と言っていましたけどね。確かに必死になって走っているときにわからなかった可能性もありますし、他の選手はどんどん行っているわけです。

F1レースでエンジントラブルが起きたときに、待ってくれますかね。マラソンでコケたときに、待ってくれますかねえ。ここがツールの解りにくいところであり、面白いところなのでしょうか。
総合優勝決まっているときは、区間優勝などはわざと相手に譲ったりすることもあり、そういうときは、「花も実もある騎士だねえ」「男だねえ黄桜呑む?」となるわけですね。

とにかく、チームとしては、誰かひとり(通常はエース)が優勝すればチームが優勝したことになるわけですから、エースの他のメンバーはエースが勝つためには自分を犠牲にしてあらゆることをやるわけですね。エースの自転車が壊れた、サポートカーがなかなかこないとなると、メンバーが自分の自転車を渡すのですな。
あるいはわざわざ自ら順位を下がっていって、サポートカーから飲み物を受け取ってエースのところまで戻るとか。(エースが必死になって走っているわけですから、それに追いつくというのは大変なことなのですよ。)

マナー違反であってもルール違反ではない、チームの戦略上、今日はあえて勝ちにいかないなどの複雑な要素がからまっているらしいのですよ。それと、もちろん個人個人のプロとしての生活もかかっていますのでね。エースの調子が悪いと、あわよくば、オレがなんてことを考えながら、自己犠牲に励むわけですね。うーん複雑。

そういった事情が小説の場合は典型的に書かれますので、ヘタなガイドブックよりはわかりやすい時もあるのですね。
シリーズ第3弾、楽しみにしています。頑張ってください近藤さん。

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